2026/07/03 (FRI)

2026年度 立教大学映像身体学学生研究会 スカラシップ審査結果

OBJECTIVE.

2026年度 立教大学映像身体学学生研究会 スカラシップの審査結果、詳細、講評は以下の通りです。

1. 審査結果

【 研究部門 】 採択 2 件


  • 「 初期バタイユ思想における機械映像の位置——『ドキュマン』誌の図版を中心に」吉冨 快斗

  • 「日本演劇におけるキャラクターの生成—『平家物語』から現代演劇に至るアダプテーションの連鎖を手がかりに—」ニイ エイクン

【 制作部門 】 採択 2 件


  • 『山の音』 チェン シヤ

  • 『獨 アニメ『チ。—地球の運動について—』より』 飛永 彩羽

2. 審査詳細

【 研究部門 】

■審査員
日高優、碓井みちこ、高山真

◆一次審査
2件の応募があり、2件が二次審査に進みました。

◆二次審査
2件を審査した結果、2件が採択されました。

【 制作部門 】

■審査員
審査員:砂連尾理、樋本淳、山田達也

◆一次審査
5件の応募があり、4件が二次審査に進みました。

◆二次審査
4件を審査した結果、2件が採択されました。

3. 講評

各審査員からの講評は以下の通りです。

【 研究部門 】

研究部門審査員一同
今年度スカラシップ(研究部門)には2件の研究計画が申請された。書類審査および面接審査を通じて、いずれの研究計画についても学術的意義が認められた。審査では、研究計画の実現可能性や研究範囲、予算計画についても確認を行った。審議の結果、1件は採択、もう1件は期限内に研究を遂行できるよう研究範囲を絞ることを条件として採択した。

【 制作部門 】

砂連尾 理
「山の音(仮)」 チェン・シヤ
チェン・シヤさんの「山の音」は、「アマチュアリズムに基づく映画制作」を方法論とする作品である。この手法自体は濱口竜介監督の「ハッピーアワー」において先行事例があるが、本企画にはそれとは異なる固有の意義がある。チェンさんの母国ではない日本という場所で、日本人および在日中国人のアマチュアの人々がワークショップを通じて出会い、関係性を育みながら作品を生み出していくプロセスは、これまでにない映画制作の試みである。そこには、既存の方法論を超えた新たな可能性を感じた。
一方で、こうした企画が本当に実現しうるのかという不確かさも否めない。しかし、その不確かさそのものがチェンさんの日常であり、彼が日々感じているリアリティでもある。その切実さは、現在の日本社会が抱える問題、さらには世界各地で起きている様々な矛盾や分断とも深くつながっている。混沌とした時代を生きる人々に何らかの希望を示しうる作品になるのではないかという期待を持ち、今回の採択に至った。

「獨アニメ『チ。—地球の運動についてー』より」 飛永彩羽
ポストモダンダンスやコンテンポラリーダンスは、クラシックバレエやモダンダンスが主な題材としていた音楽や物語から離れ、タスク・メソッド、インプロビゼーション、日常動作のコラージュなど、多様な創作方法論を切り拓いてきた。そうした流れの中で、飛永彩羽さんが申請し継続的に試行錯誤している「アニメーションの考察をもとにダンスを創作する」という方法論は、近年新たに生まれつつあるダンス創作のアプローチとして注目に値する。
飛永さんの試みが際立つのは、アニメの動きを単に模倣・コラージュするにとどまらず、自身の内的世界と結びつけることで、独自の身体表現へと昇華している点だ。その表現はアニメーションという視覚文化を素材としながらも、明確に彼女自身のものになっている。また、日本語の持つ余白や間の感性がアニメ表現と共鳴しながら発展してきたという文化的背景を考えると、その感性を身体として生きる者がアニメーションとダンスの接点を探ることには、身体表現の新たな可能性があるように思われる。舞踏のように日本から生まれたダンスとはまた異なる、新たな表現の系譜が生まれるかもしれない。飛永さんの創作にはそうした期待を持たせる力があり、今回の採択に至った。
樋本 淳
長編劇映画3本が、いずれも「100万円」に近い予算でエントリーしていたため、その中の1本に絞ることから協議を始めました。企画の独創性、過去作品の完成度、提出されたシナリオの精度についてかなり議論をしました。採択となったチェン シャさんの作品「山の音」は、プロではない俳優を集めたワークショップの中でシナリオを創り上げていくという、実験的かつ意欲的な内容でした。ただ、この企画は面白さがある反面、上手くいかなかった時の危険も孕んでいます。しかし、チェンさんが提出していた仮シナリオの精度がとても高かったこと、チェンさんがこれまでにも同様の方法で作品を完成していることを考慮し、全員一致での採択となりました。
飛永さんの身体表現作品は、アニメーション作品をテーマに一人で踊るという、これまで彼女が続けてきた活動の延長線上にあります。面接で、今回の作品における新しいアプローチは何かを確認し、明瞭な答えが返ってきたことから採択としました。
選外となった作品もとても独創的であり、甲乙つけがたいものだったのですが、今回の作品にかける情熱と時間が、選出と選外を分けたと考えています。
山田 達也
今年度「制作部門」は中長編映画3作品、短編映画1作品、身体系1作品の合計5作品からの選考となり審査の結果以下の2作品が採択されました。

〇「山の音(仮)」 チェン シヤ
チェンさんの応募作品は他の映像作品を上回る圧倒的な厚みのある企画になっていてこれまでのワークショップの実績や提出された成果物を総合し判断しました。単に映画作品としての応募ではなく「アマチュアリズムに基づく映画づくり」というテーマが新鮮で、既存の映画制作の枠組みに挑戦しプロフェッショナルな完成度よりも、身体的表現や社会との関係性の再構築を重視する点が、現代的な問題意識と作用しあっていると感じました。また、昨年行われたワークショップをもとに外国人としての不安だけでなく、「社会的つながりの喪失」という普遍的テーマのシナリオになっていると思います。シナリオは映画制作過程でのワークショップによってさらにブラッシュアップが期待できます。映画制作にいたる過程、制作、作品完成上映の先には観客を巻き込んだ参加者のディスカッションまでがひとつのプロジェクトとして映像身体学科にとって有意義な試みになると願っています。また、シナリオから読み取れる登場人物に寄りそった視覚的な映像や情景ショット、旋律的なさまざまな音を丁寧に描いてほしいと思います。

〇「獨 アニメ『チ。—地球の運動について—』より」 飛永彩羽
飛永さんの応募作品は「アニメーション考察をもとにダンスを創作する」融合的アプローチの企画です。アニメーション(映像)を分析しダンス(身体表現)に翻訳創造し落とし込み舞台芸術として上演する、そこには照明、映像、衣裳も自らプロデュースするというように、まさに現代的で個性的な発想でありこれまでの継続的な実績を鑑みて採択しました。今回はテーマのスケールが大きくかなり難しい挑戦になると思います。“独りで踊る”というコンセプトを軸にしながらも、今までのように仲間と協働し多角的に作品を構築してもらいたいと思います。アニメーションとダンスの融合という新しい表現形式は映像身体学科においても大きなインパクトになると期待します。

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