メンタルヘルスの向上における旅行や余暇の過ごし方の効果についての研究
現代心理学研究科心理学専攻 川久保 惇さん
2022/04/21
修了生
OVERVIEW
現代心理学研究科博士課程後期課程修了後、現在は埼玉学園大学 人間学部心理学科で准教授として仕事をされる川久保 惇さんにお話を伺いました。
Q:現在の研究テーマ
博士後期課程2年次の2015年、マレーシア・クアラルンプールで開催された国際学会で「ザ・ベスト・ペーパー・アワード」を受賞した川久保惇さん(写真中央)
大学院の博士前期課程では臨床心理学専攻に進み、後期課程で心理学専攻に進みました。前期課程で臨床心理士の資格をとり、後期課程では特にメンタルヘルスと余暇の関連について研究しました。医学的な治療が必要とされる段階までには至ってはいない人が、より良く生活するためにはどうすればいいか。余暇の過ごし方に注目し、その人のウェルビーイングの向上につなげるための研究です。後期課程2年次の2015年、マレーシアのクアラルンプールで開催された国際会議で、指導教員だった小口孝司先生を代表者とする共同研究論文が「ザ・ベスト・ペーパー・アワード」を受賞しました。週末の宿泊施設を利用した観光旅行が、働く人のメンタルヘルスにどのような影響を及ぼすかの研究でした。この国際学会での受賞はその後の研究の大きな励みになりました。その後もメンタルヘルスの向上における旅行や余暇の過ごし方の効果についての研究を続けています。
Q:大学院時代の思い出
前期課程の臨床心理学専攻では、臨床心理士を養成するためのさまざまなカリキュラムが組まれていました。院生同士でカウンセリングのロールプレーをやっているところをビデオに録画し、あとで見直したりしたことがとても印象に残っています。メンタルクリニックで1年間実習できたことも思い出です。毎週1日の実習でしたが、実際に来院する患者に触れることで、人がどんなことに悩んでいるかを学ぶことができました。文献や論文を読んで頭で理解するのではなく、人がどのような悩みをもって医師やカウンセラーのもとを訪れるのかを体験できたことはその後の研究にとてもプラスになりました。後期課程で印象に残っているのは、海外の研究発表にたくさん行かせてもらえたことです。後期課程に3年半在籍しましたが、韓国、ベトナム、マレーシア、米国、中国、英国に行かせてもらいました。なかでも、前述したマレーシアのクアラルンプールで行われた国際会議での受賞がいちばんの思い出です。
Q:大学院の良さ
研究に対するサポート体制が充実していることです。文献検索のしやすさは言うにおよばず、学会発表に対する支援には優れたものがあり、院生に対するサポートがとても手厚い大学院です。文系学部は理系学部に比べ大学院、特に博士後期課程に進む学生は少ないと思います。私の大学時代の同期で大学院に進んだのは4、5人でしたが、指導教員の先生方から研究室の枠を越えて指導していただける体制があります。さまざまな人的資源やサポートを活用できる点においてもとてもいい大学院だと感じています。私の心理学専攻後期課程在籍時の先輩や後輩の8、9割は修了後、大学や企業の研究者になっています。これは全国的にみても珍しいことではないかと考えています。大学院には論文をたくさん発表されている先生が多く、他の大学に移られて活躍されている先生も多い。将来、大学の研究者の道に進もうと考えている人に適した大学院だと思います。
Q:いまの仕事内容と今後の目標
川久保 惇さん(埼玉学園大学にて)
埼玉学園大学では、基礎的な心理学概論や心理学実験の授業のほか、専門科目として産業・組織心理学を担当しています。研究分野としては、大学院時代からのメンタルヘルスと旅行や余暇の過ごし方の研究のほか、最近では「日本人はなぜ有給休暇をとれないのか」についてあらためて研究してみたいと考えるようになりました。労働基準法が改正され、年次有給休暇の取得が義務付けられましたが、全体の取得率はまだまだ低いようです。一方、最近の米国の論文をみると、米国での有給休暇の取得率が下がる傾向にあります。欧米では有給休暇をとるのが当たり前のように考えてきましたので、これはとても興味深いことだと感じています。背景には、休暇を取ることへの罪悪感といった日本的な理由のほか、休暇を取ると職場内の競争に負けてしまうということがあるようです。日本でも有給休暇を取れない現状がありますので、欧米の研究で用いられているデータの分析方法などを研究して、日本に当てはめてみることで、有給休暇への考え方や日本人の働き方の新しい形が見えてくるのではないかと考えています。
※記事の内容は取材時点のものであり、最新の情報とは異なる場合があります。
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プロフィール
PROFILE
川久保 惇さん
修了後の進路:埼玉学園大学 人間学部心理学科 准教授