支援を必要としている人に還元できる研究
現代心理学研究科臨床心理学専攻 岩山 孝幸さん
2022/04/21
修了生
OVERVIEW
現代心理学研究科博士課程後期課程修了後、現在は昭和女子大学 人間社会学部心理学科で助教として仕事をされる岩山 孝幸さんにお話を伺いました。
Q:現在の研究テーマ
岩山 孝幸さん(昭和女子大学にて)
学位論文のテーマは、簡便な脳機能画像法「近赤外分光法(NIRS)」を使ってうつ病患者の方の脳血流を測定し、治療に反応している人とそうでない人にどのような差があるのかを調べる研究でした。精神疾患では治療効果は目に見えにくいものですが、脳の機能を数値化することで治療効果の客観的評価を行うことができるのではないかと考えました。いま、外勤先である埼玉医科大学総合医療センターメンタルクリニックの非常勤講師として、てんかん患者の方を対象とした研究に参加しています。てんかんや精神疾患を抱える人は、病気を抱える自分そのものに対して偏見を向ける、すなわち自分を否定的に捉えることが知られています。その偏見を和らげるための研究プログラムで、プログラム前後で効果があったかを統計的に分析する仕事を担当しています。心理学は目に見えないものを対象としています。それをいかに見えやすくするか。研究のための研究ではなく、サービスの受け手である、支援を必要としている人に還元できる研究を大切にしています。
Q:大学院時代の思い出
大学院博士後期課程時代の岩山孝幸さんのデスク周辺
24時間365日、好きなときに好きなだけ研究室を使うことができたことです。研究室で年越しをしたこともありました。夜、誰もいない研究室を独り占めして本や論文を読むこともしばしばでした。夜9時ごろになると警備員が見回りに来ます。その日会話をしたのはその警備員だけという日もありました。東武東上線の志木駅から徒歩で通っていましたが、ギリギリまで研究に取り組んでいたため終電を乗り過ごし、また歩いて研究室に戻り、仮眠をとって帰宅するということもありました。好きなだけ研究室で過ごすことができた。それが大学院時代の思い出ですね。博士後期課程では院生一人に一つのデスクが与えられますが、そのデスクも広く、たくさんの本を置くスペースがありました。私にとってはとても恵まれた研究環境で、これほど自由に研究室を使うことができる大学院は他にはあまり例がないように思います。
Q:大学院の良さ
自由な研究風土があることです。他大学院では研究室相互の交流よりも、研究室内の交流がメインのところもあるようです。立教大学大学院では研究室単位だけでなく、専攻を越えた交流も可能です。私の場合、心理学専攻の院生さんから実験プログラムについてアドバイスをもらえたことで、学位論文のために必要な実験を行うことができました。また、院生の自治を尊重してくれる大学院でもあります。院生が所属する「院生会」という自治会があり、その年度にどのような備品を購入するか、院生が話し合って決めています。院生自らが研究生活をより良くしていこうとする姿勢を大切にしてもらえます。また、院生に対する手厚い研究補助制度があるのも大きな特徴です。大学としてリサーチ・イニシアティブセンターがあり、海外だけでなく、国内で学会発表をするときでも交通費などの費用を補助してもらえます。これとは別に現代心理学研究科独自の補助制度もあります。大学院に進むこと自体、お金がかかることですので、研究補助制度が充実していることがとてもありがたかったと感じています。
Q:いまの仕事内容と今後の目標
心理専門職初の国家資格として公認心理師が誕生しました。いま勤務している大学では公認心理師を目指す学生を指導しています。「国民の心の健康の保持増進に寄与すること」が公認心理師の仕事ですが、私はバランス感覚をもった人を育てていきたいと考えています。これまでの臨床実践のなかで、心理学という一つの視点にこだわることが結果として悪い方向に作用することも経験してきました。心理学にも限界があることを理解し、その限界を見極めたうえでできる限りの支援を届ける。そんなバランス感覚をもった人材を育てたいと思っています。そして、どの公認心理師に相談しても、同じ水準で支援を受けることができるよう、公認心理師養成の訓練課程についても研究したいと思っています。個人の研究テーマとしては、これまでに培った学際的な心理学の知識を生かし、精神医学などさまざまな分野の研究者と連携して、一つの視点では見えなかったものを一緒になって解き明かしていく研究を進めていきたいと考えています。
※記事の内容は取材時点のものであり、最新の情報とは異なる場合があります。
CATEGORY
このカテゴリの他の記事を見る
プロフィール
PROFILE
岩山 孝幸さん
修了後の進路:昭和女子大学 人間社会学部心理学科 助教